できるメイド様 48話《前回のお話》
ラエルと西南部の視察に一緒に行くことになったマリ。
馬車の中でラエルと2人きりのマリはいつもより緊張してしまいます。
突然、馬車が小石に乗り上げ体勢を崩したマリは…?
できるメイド様 49話 ネタバレ
東帝国の侍女たちの憩いの場にて。
「あの2人、西南部の視察中に仲が深まったりして…」
「え~まさか!あの皇太子殿下と?」
「でも殿下はヒルデルン卿を可愛がっていたでしょう?」
「護衛がいるとはいえ2人きりで遠出するのに何もないなんておかしいわよ」
「前々から怪しいと思ってたのよね」
女性たちは「うんうん」と相槌を打っています。
「ヒルデルン卿が皇太子妃になったりして…」
「ええっ!さすがに皇太子妃候補を差し置いてそんなことは…」
馬車の中。
キラキラと輝くラエルをぼーっと見つめているマリ。
「ケガはないか?」
ハッと我に返るマリ。
「!!」
「すっ…すみません!」
〈どうしてこうなったんだっけ…?〉
ことの順序を思い出し、ラエルに抱きついてしまったこと再確認して赤面します。
「…大丈夫か?」
「すすすすすっすみませんでした!お許しください!」
「気にするな、ケガがなくてよかった」
〈皇太子の胸に抱かれたなんて恥ずかしくて顔も見れない!〉
なんとか気を落ち着かせようとゴホンと咳払いします。
チラっとラエルのほうを見るマリ。
書類を顔の前にもってきているラエルの顔は確認できませんでした。
〈落ち着こう、平常心を取り戻さなきゃ〉
ラエルは書類で顔を隠しながら自分の顔が赤くなっているのを自覚していました。
〈胸の高鳴りがおさまらない…やっぱり1人で来るべきだったか〉
馬車は目的地に到着しました。
「…はあ、やっと着いた」
体を伸ばすラエル。
「殿下、お疲れのようですが大丈夫ですか?」
マリが駆け寄ってきます。
ラエルは馬車の中でのマリの様子が気になって仕方なかったことを思い出します。
「き…」
〈君のことが気になって…〉
「…なんでもない」
〈帰り道が心配だな〉
「?」とマリ。
そこへアルモンド子爵がやってきます。
「殿下、思ったより早く日が落ちてしまい今日は野宿するしかなさそうです」
「ああ構わない」
そこでマリのほうを見ます。
〈…しまった!野宿をする可能性について考えてなかった〉
〈マリが風邪でもひいたらどうするんだ…!?〉
アルモンド子爵に何やら伝えようとするラエルですが、言葉にはなってません。
「…」
アルモンド子爵も困っています。
「…この辺りに宿屋があるわけないよな?」
「はい、人が住んでいたところは内戦のときにすべて焼き払いましたので…何か問題でも?」
「野宿用の寝具は用意してあるのか?」
「え?それはもちろん…」
「ゆっくり休めるように宮殿のベッドくらい柔らかくて暖かいものを用意してくれ」
「…宮殿のベッド…ですか?」と戸惑うアルモンド子爵。
「そうだ」
「…かしこまりました」
寝具が用意されます。
「明日は部屋の中で休めるはずだ、今日だけ我慢してくれ」
ふわっとマリの前に寝具が置かれます。
「これは…殿下のものだと思いますが…」
「違う」
「…本当ですか?」
「ああ、俺は寝具にこだわらない」
〈不眠症だから誰より睡眠に気を使っている人が?〉
「そんなこと言わずに…」
「じゃあ俺はアルモンドと話があるから…先に休め」
マリの言葉を遮ってシュンと殿下は立ち去ります。
「えっ?殿下?」
仕方なく用意された寝具に横になるマリ。
〈野宿に慣れていないただのメイドにここまでしてくれるなんて…〉
空には眩いばかりの星がキラキラと無数に輝いていました。
〈クローヤン王国の王女である私が、皇太子のそばを離れなくても済む方法はあるのだろうか?〉
マリはぼんやりとそんなことを考えてしまうのでした。
たき火の側でスヤスヤと眠るマリをそっとのぞくラエル。
「…寒くはないだろうか?」とボソッと呟きます。
毛布を肩までかけてあげるラエル。
〈俺は君に何をしてあげられる?〉
〈こんなに君のことが気になるのに〉
〈どんなに努力しても目を離すことができないのに〉
〈このまま…俺のものにすることはできないのか?〉
マリの顔に手を伸ばそうとしますが、ぐっと堪えます。
すると背後で声がしました。
「あまり感情を押し殺しすぎるのもよくありません」
アルモンド子爵でした。
「何を言ってるんだ?アルモンド」
「生意気なことを言っているのは承知しておりますが…感情から目をそらせばいつか後悔することになります」
「時には複雑な事情よりも自身の正直な感情を優先すべき時もありますからね」
「…経験談か?」
「昔…自分の気持ちから目をそらして後悔したことがあります」
「殿下には私と同じ失敗をしてほしくないのです」
「俺は帝国のためだけに存在している、それ以外は何も意味がないのだから…」
「俺個人の感情などどうでもいい」
悲しげにうつむくアルモンド子爵。
「ちょっと散歩してくる」
「護衛します」
「必要ない、遠くもないし、いつも行く場所だ」
「お気をつけていってらっしゃいませ」
「ですが殿下、あまり自分を追い詰めないでくださいね」
去っていく後ろ姿を見送るアルモンド子爵…。
できるメイド様 感想と考察
ラエルの腕にすっぽり抱かれてしまったマリ。
ドキドキしましたね!
マリもビックリしたでしょうけど、それ以上にラエルの顔が赤くなっていたのは意外でした!
いいもん見た~!!って心境です。
あの氷のように冷たい感情を持っていそうなラエルがマリに対しては普通の男性と変わらない反応をするんですね!
そんな人間味溢れるラエルを引き出すのはやっぱりマリしかいません。
アルモンド子爵もラエルの想いに気づいているようで、アドバイスまでしちゃってますし。
まあ、「俺の感情はどうでもいい」とかって突っぱねてましたけど。
マリはマリで、ラエルのそばに居れる方法を考えるまでになってしまって、お互いの想いが近づいてきた証拠でしょうか。
この視察できっとあの女性たちが噂していたように、何かあるかもしれませんね!
立場上、すんなり想いが通じあって、実はモリナ王女でした~めでたしめでたしとはならないと思いますが、マリの気持ちがラエルに向いて、ラエルの元から去るっていう選択をしなければいいなって思います。