一見どこにでもいそうな惚れっぽい侯爵家のメイド「ジエン」。
しかし彼女の前世は【偉大で邪悪な王】だった。
前世で死んだ時に王を恨んでいた3人の女人の願いにより、「美しい容姿、優れた剣術、誰も愛することのない鋼の心」を奪われ、転生したのだった。
転生後のジエンの前には、男として生まれ変わった女人たちが次々と現れる!
廻り始めた運命の輪。
4人の悪縁は繰り返されてしまうのか…⁉︎
暴君の行方 53話ネタバレ
前世で私が公子様のお父さんとお兄さんを切り裂いた剣術。
それで私を守るなんて絶対にダメ!
それだと今生で罪を償うどころかいつまでも罪が上乗せされていってしまう…。
ジエンは胸がズキンと痛み、この痛みがいつから始まったのか思い出そうとします。
公子様が私の手を取り踊ろうと言ったとき?それとも神殿に行くときに具合が悪いのか聞かれたとき?もっと前?
腫れたおでこを治してやれとヘカテにキレてくれたとき?
もっともっと前にジャガイモの皮の剥き方を教えてくれたとき?
公子様は今、私のために剣を握っている、できることなら私が変わってあげたいと思うジエン。
剣以外の武器を使えば私にも勝算あるんじゃない?と本気で考えていると、カールリスにチェスが強いんだって?と話しかけられました。
今そんなことどうでもいいでしょ!と怒るジエン。
チェスは貴族の間では大人気なんだぞ!と話を続けるカールリス。
ナセル公子様が決闘を挑まれているのに…と答えるジエン。
準備はいいか?とベルハルトが2人に言います。
カールさんのせいで私が代わりに戦うって言いそびれたじゃないですか!とジエンが言うと、カールリスは騎士への侮辱で捕まるぞ!と心配になります。
ナセルがひとつお願いがあると言います。
まだ真剣を使い慣れておらず、力の加減がわからないので木刀を使いたいとラムドス卿に伝えます。
どうだ?とベルハルトがラムドス卿を見ると、怒りに震えていました。
「平民のメイドに公子まで…さっきから侮辱続きだ」
簡易決闘ではありますが覚悟したほうがいいですよと言うラムドス卿。
「では、はじめ」のベルハルトの言葉で決闘が始まりました。
ラムドス卿の勢いに押されるナセル。
ジエンは祈ります。
カールさんは心配じゃないんですか!?と苛立ちながら聞くジエン。
カールリスは冷静に「うん」とだけ答えます。
どうしてそんなに冷静でいられるのか秘訣を教えてほしいとジエンが頼むと、あることを教えてくれました。
数日前に屋敷の中で剣の跡が見つかり騒ぎになったこと、でもそれはカールリスの仕業ではありませんでした。
誰だと思う?聞くカールリス。
誰って…暗殺者じゃなけれなナセル様…?
でもナセル様は大公邸で剣を持ち歩いたりはしないはず…。
真剣以外で壁に跡を残せるのは…『剣気!?』
そのときナセルの剣からブワッと風が起こりました。
その異様な剣さばきにゾクッとするラムドス卿。
きゅ…急になんなんだよ!?
見えないほどのすばやい剣が繰り広げられました。
〈司祭とは思えない動き!〉
いろんな戦場で戦ってきたラムドス卿は断言します。
これは戦場を血の海にしてきた残酷な虐殺者の剣だと。
見ていたものたちもザワつきはじめました。
公子が豹変したぞ、あれが司祭だって?
押されていたのではなく、ためらっていただけなのか?
そのとき見ていた一人があるうわさ話を思い出しました。
ナセル公子は剣を使うのを嫌がっていると、誰かを斬るときの感覚が手に残るのが嫌だそうだ…。
戦うときは嬉々とした表情を浮かべるが、戦いが終われば自分の手と倒れた相手を見て、その場に剣を残し、いなくなる。
剣をただの凶器としか見てないんだと。
ナセル公子の中に「偉大で邪悪な存在」の一部が眠っていて、剣を握るとそれが目覚めるのでは!?という噂があると言います。
それほど恐ろしい剣術を使うのだと…。
前世の私はあんな剣術を使ってたの…?
恐ろしくなるジエン。
すると、カールリスがあいつら何言ってんの?呆れています。
ナセルの剣術がおっかないのは、あいつが元々凶暴だからなのに。
言われてみるとそうかもしれないと思うジエンでした。
そうこうしてると、決闘は終わりナセルの前に倒されるラムドス卿。
約束どおり、うちのメイドの件はなかったことにしてもらいましょうと告げるナセル。
正直スッキリしない部分はありますが、それは追々と、柱の陰に隠れているメイドに目をやります。
おまえが俺のメイドだったなら、俺だって受けて立ったけどなと言うカールリス。
ただでさえ目立っているのに、カールさんまでやめてくれと思うジエン。
視線を感じた方を見るとベルハルトまでがこちらを見ていました。
ジエン大丈夫か?と走り寄ってくるナセル。
あの騎士に怒鳴られて怖かっただろ?心配しています。
そうでもなかったです、キレたヘカテの方が百万倍怖いのでと答えるジエン。
それもそうだな…もナセルも納得しました。
とにかく無事で良かった、帰ろうと言うナセル。
はい…と言ってジエンはなぜか助骨の間がくすぐられるような感覚を感じていました。
これが心配されるっていうことなのかな…?
なんだか…借りを作った気分‼︎
次は…もっと踊りましょうねと前を歩くナセルに言うと、顔を赤くして振り返るナセル。
そうだなと嬉しそうに笑います。
ジエンは思います。
きっともうあんな機会はこないだろうけど、それでも…。
「暴君の行方」感想と考察
ジエンのために簡易決闘を何のためらいもなく受けてたつナセル様。
やっぱりかっこいい…。
本当にジエンのことを心配していて、いつでも気にかけている王子様ですよね。
マナを相当使えるようになってますし、圧倒的な強さでした。
ジエンは注目されて嫌そうでしたけどね。
でも今までに感じたことのない「心配される」という気持ちを感じることができてよかったのではないでしょうか?
それにナセル様に感じる「ズキン」として気持ちもどういった感情なのか気になりますよね?
カールさんは相変わらず軽い調子でジエンの側にいましたけど、何を考えているのかわからない人ですよね…。笑
ナセルの剣術を目の当たりにして、ジエンは前世の自分があんなにも恐ろしい剣術でナセルの前世の父親や兄を傷つけたのかと胸が痛くなっていました。
それなのにナセル様は自分のために戦ってくれている。
ナセル人気がうなぎ上りになりそうな予感!?
ジエンに今度はもっと踊りましょうねと言われて嬉しそうなナセル様が印象的でした。