できるメイド様
特技が一つもない冴えない侍女マリ。
いつもいじめられるばかりだった彼女に、ある日信じられないことが起きた。
「君のために最後にお祈りをしてあげよう、君の願いは何だい?」
死んでいった囚人を看病していたマリに訪れた奇跡。
「万能な人になりたいです」
その日からとても神秘的な夢を見始めることに。
完璧な侍女!最高の彫刻家!天才音楽家!
夢を通して夢の中の人物の能力を得て、何でも完璧な侍女マリの物語がいま始まる!
「できるメイド様!」 44話のネタバレ
「イーストバーン家のレイチェルが皇太子殿下にご挨拶申し上げます」
頭を下げるレイチェル。
「今回の使節団の問題を解決する方法があるそうだな?」
「はい、アリエル令嬢のせいで起きてしまった問題について少しでも殿下のお力になりたいと思い、色々考えてみたんです」
レイチェルは続けます。
「要点は向こうの無理な要求を受け入れることなく、和解することだと思います」
「彼らがどんな用件で訪問したのかは分かりませんが、宗教の違いだけで対話もせずに帰すのは、帝国としても望まない結果ではないでしょうか?」
静かに聞いていたラエルが口を開きました。
「それじゃあこの問題をどうやって解決すると言うんだ?」
レイチェルはマリに言われた言葉を思い出します。
《皇太子殿下が方法について質問してきたらこう答えてください》
〈マリ…本当にすごいわ、こんなことまですべて把握してるなんて…〉
少し間をおいてレイチェルが答えます。
「簡単です、屠殺を避ければいいのです」
「つまり、一切の肉料理を出さなければ問題にはなりません」
「肉を出さないだと?だったら野菜だけのメニューになるが、それじゃあ接待とは言えないだろ」
オルンが口を挟みました。
コクリとうなずくレイチェル。
〈そうね、私も同じことを思ったわ、でもマリは…〉
「イスラム教では野菜、果物、穀物以外に骨のある魚料理も許されています」
「スープやオードブル、アントレなら肉を使わずに野菜だけで作ることが可能です」
「そしてメインディッシュも肉料理ではなく魚料理に変えるのです」
オルンが質問します。
「野菜と魚だけじゃメニューの構成が地味にならないか?」
レイチェルは自分がマリに同じ質問をしたことを思い出しました。
レイチェル:《でもそれじゃあ地味じゃない?》
マリ:《確かにそうですが、でも…それは彼らが受け入れるべき部分です》
同じことをラエルに伝えるレイチェル。
「どういう意味だ?」と問われると、「言葉のままです」と返します。
「東帝国が彼らに対しそこまでしてあげる必要はないということです」
レイチェルとマリが重なって見えました。
「最近大きな衝突があったわけではありませんが、それでも敵国です。基本的なマナーさえ守れば十分でしょう」
「我が国と教国が交流のある親しい間柄でもないのですから、大歓迎する必要はありません」
「ですので、これくらいのおもてなしで十分だと思います」
オルンが感嘆しました。
「素晴らしい!異教徒についてもそんなに詳しいなんて知らなかった」
「ありがとうございます。たまたま本で読んで知っていただけでございます」と頭を下げるレイチェル。
〈実は私じゃなくてマリの意見だけど、私がうまくいけばマリにとっても利益になるものね〉
「私が余計なことを言ってお二人を混乱させてしまったのではないか心配です…」
「そんなこと…」と言って、くるっとラエルを見るオルン。
「レイチェル令嬢の意見について殿下はどうお考えですか?」
「いいアイデアだ。その通りに進めてくれ」
「!!」
レイチェルは手ごたえを感じました。
「私の意見を聞き入れてくださり、ありがとうございます」
〈やっと認められたわ!〉
口元がにやけそうになるのを必死で抑えます。
「使節団の接待はレイチェル令嬢に任せよう、困ったことがあればすぐ言うように」と皇太子が言いました。
「はい、分かりました。最善を尽くします」
部屋を出て行こうとするレイチェルを呼び止めるラエル。
「あっもう一つ聞こう」
「イスラム教について本で読んだと言っていたな?」
「はい」
「何という題名の本だ?」
レイチェルの手がピクッとなります。
「それは…」
マリとの会話を思い出すレイチェル。
レイチェル:《マリ、どうしてそんなに詳しいの?》
マリ:《本で読んだんです》
レイチェル:《本?》
マリ:《はい、昔クローヤン王城にいたときに図書館にある本を読む機会がありまして…あそこにいた頃は本をたくさん読みました、本当に…たくさん…》
「ドレーイン男爵の『異教徒生活記』という本です」とレイチェルは皇太子に答えました。
〈よかった~、念のため聞いておいたのよね〉
「…そうか、下がっていいぞ」
「はい、失礼いたします」
部屋を出ていくレイチェル。
「本当に素晴らしいと思いませんか?あんなに賢い方が皇太子妃になれば、帝国の未来も明るいですね」とニコニコ顔のオルン。
「オルン」
「はい殿下」
「異教徒生活記を書いたドレーイン男爵が誰なのか知っているか?」
「もちろんです。十年前に地中海で異教徒海賊に誘拐されたクローヤン王国の貴族ですよね?捕虜生活について記した本があるなんて知りませんでしたが」
「ああ、その通りだ」と机をコツコツする皇太子。
「どうしてですか?」とオルンが聞きます。
「何でもない、お前ももう下がっていいぞ」
「?」
意味がわからないまましぶしぶ下がるオルン。
ドサッと椅子にもたれかかり宙を仰ぐラエル。
〈そうだ、ドレーイン男爵はクローヤン王国の貴族〉
〈そして彼の本は我が帝国では出版されたことはなく、クローヤン王国でのみ出版された〉
〈クローヤン王城を占領した後にたまたま図書館で見つけた本だが、ここで話題に上がるとはな〉
〈帝国にはない本だから確かに記憶している。それなのにレイチェル令嬢が読んだことがあるというのはどういうことだろうか?〉
〈彼女がそれほど読書に興味があるということなのか?〉
〈いや、アイディアのように見せかけてきっとこれも…〉
〈マリ〉
〈日に日にマリだけが俺の目に映るのはどうしてだろうか…〉
〈君だけが…〉
レイチェルが準備した晩餐会は豪華でも派手でもなかったがイスラム教に反するものは一切ありませんでした。
このことはレイチェル評価をあげ、アリエルの評価は反対に下がっていきました。
しかし当の皇太子はレイチェルに何の反応を示さなかったため、マリはレイチェル令嬢との仲をどう取り持てばいいか悩んでいました。
そんな中、重大な出来事が起きます。
東方教国の使節団がついに皇太子ラエルと直接会うことになったのでした。
内容は食料の援助をしてほしいというものでした。
援助してもらえなかったら戦争を起こすというニュアンスを伝える東方教国。
しかし援助してくれたらなら東帝国が困難に陥った際には必ず助けるというものでした。
ことの騒ぎを聞いて心中穏やかでないマリ。
〈教国の脅迫に振り回されず戦争を避ける方法はないのかしら?難しい問題だから皇太子殿下も頭が痛いでしょうね〉
〈大丈夫かな?このことでまた不眠症が悪化するんじゃ…〉
「殿下、失礼します」とラエルの部屋に入るマリ。
〈あれ?いない〉
「殿下はまだ執務室におられる」
「あ…じゃあ…」
〈帰ったほうがいいのかな…〉
「執務室に行くように」
「え?でも…」
「殿下がお悩みのようだから頭痛に効くお茶も持っていってくれ、君が行けば喜ぶだろう」
その言葉に戸惑ってしまうマリでした…。
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「できるメイド様!」44話の感想と考察
レイチェル令嬢ってきっと頭の回転は早いんでしょうね。
でもラエルの洞察力には到底敵いません。
どうしたってマリがしたことだと気づいてしまうラエル。
きっと運命のお導きなのではないかと思います。
どのタイミングでマリがクローヤンのお姫様だって気づくのでしょうか?
早く気づいてほしいけど、マリは望んでないんですよね…。
でもマリがラエルを心から愛した時には逃げないで向き合ってほしいです。
そして今回、またまたラエルが頭を悩ませているようなので、マリが助けてあげるのでしょうか?
続きが気になります!